LOVELY LIBRARY 第27回·立正大学付属立正中高の図書館《特別編》
情報誌『shuTOMO』2026年1月12日号でご紹介した立正大学付属立正中学校・高等学校の「LOVELY LIBRARY」取材時に先生方に伺ったお話を、特別編としてWebでお伝えします。〈取材・撮影・文/ブランニュー・金子裕美〉
生徒目線で選書。話題の本も充実
--バランスを重視しながらも、生徒さんの興味関心を意識した蔵書が印象的でした。改めて、選書で意識していることを教えてください。
平林先生 話題になっている新しい本や文学作品はそれなりに入れています。仏教主義の学校なので、仏教や歴史に関する本も多いと思います。また、講談社のブルーバックスや岩波ジュニア新書・ちくまプリマー新書は創刊号から揃っています。この図書館に移ってから、これまで書庫に収納していた岩波文庫を開架すると、時々生徒が借りていきます。中学生には「5分後シリーズ」のような短編が人気ですが、中には中2で池波正太郎の作品を読む生徒もいます。中高男女の中で最も本を読むのは女子中学生なので、選書の際にそこは少し意識するところです。生徒数は男子のほうが多いので、そこも考えなければならず、結果的にまんべんなく各分野が揃っている状態になっていると思います。
雑誌&付録は年イチで有効活用
--雑誌や新聞も種類が多く、管理が大変なのでは?
平林先生 雑誌や付録は溜まりやすいので、年に一度、生徒に告知をして、希望者にあげています。サッカー雑誌にはポスターなどの付録があります。『スクリーン』という映画専門誌にもいろいろな付録がつくので、楽しみにしている生徒もいます。残ったものは廃棄するため、生徒が持ち帰ってくれることで有効活用できればいいと考えています。
ICシステムで貸出業務をスマートに
--貸出業務は平林先生と司書の方で行っているのですか。
平林先生 そうです。本校には図書委員会がないので、私たちで行うのですが……。将来、地域に図書館を開放することも視野に入れて、出入口に入退館ゲートを設置するとともに、蔵書の管理にICシステムを導入しました。そのため、貸出時の作業は簡素化されました。IC台に本を載せてもらい、生徒証のバーコードを読み取れば完了します。複数の本を載せても、一度に手続きができるので、1学期の終業式後のように、夏休みの課題に向けた本を借りに来る生徒で混雑する日は、大変助かります。生徒にとっても、並ぶ時間の短縮につながっています。
立正大学で図書館学を担当
--平林先生と読書のつながりを教えてください。
平林先生 小学校のときは伝記などを読んでいました。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康などの戦国武将が好きでした。高学年のときは宮沢賢治の童話を読んでいました。図書委員もやっていて、本は身近でした。中学までは本を読んでいましたが、高校時代は学校の課題ぐらいであまり読んでいませんでした。ただ、言葉の研究に興味をもっていたことと、高校時代に書道部に所属していて、立正大文学部国文学科(現在、文学科)では書道の教員免許も取得できるので、内部進学しました。書道の免許を取れるところは意外と少ないんですよね。
私は今、立正大学で司書教諭を目指す学生に図書館学を教えています。私が学生の頃は履修する学生が30人ぐらいいましたが、今はものすごく減っていて、多い年で12、3人。今年度は6人です。司書教諭の場合、まず何らかの教科で教員免許を取得しなければならないので、教職志望者より人数がさらに減ります。ただ、受講している学生さんは非常に真面目です。言われたことを、概ねきちんとやってきます。司書教諭の免許はどんな教科の教員でも取得できるので、興味をもってもらえたらいいなと思っています。
紙の本はデジタルよりも記憶に残りやすい
--読書において、日頃感じていることがあれば教えてください。
平林先生 読書は紙の本だけでなく、スマホやタブレットでも読めるようになりました。本校の読書ノートは手書きですが、デジタル機器で入力しているところもあるかもしれません。つまり読み書きがデジタルで行える時代になったわけです。例えば、辞書の研究会などで「紙の辞書と電子辞書とネット辞書、どれが残るか」などをテーマに話し合うと、「残るのは恐らく紙の辞書とネット辞書ではないか」という意見に落ち着きます。電子辞書は中途半端だから残らないとされています。何冊分もの分厚い辞書が機器の中に入ってしまうので、持ち運びには適していますが、調べたい言葉にピンポイントでアクセスするため、紙の辞書のように周辺の言葉が目に入りません。
私も、周辺の言葉も覚えられる、紙の辞書のほうが好きです。何回も何回も引いていると、どこに何が書いてあるのかを大体把握できます。紙のほうが、記憶として頭に残るのだと思います。たしかスウェーデンは、電子教科書から紙の教科書に戻したんですよね。学力の定着率が悪いということが理由だったと思います。音楽家でも最近は楽譜をタブレットに入れるようですが、紙のほうがなぜか覚えられるとラジオで聞いたことがあります。私はページをめくる作業が関係しているのではないかと思います。人間は紙をめくる感じが好きですよね。何気なくめくっていますが、それが実は脳にとって意味があることのような気がします。(デジタル機器の)画面だけを見ているときとは、脳の使い方が全然違いますから。昔、暗記するときによく言われたのは「声を出しなさい」ということ。体を使うということは意味のあることで、読書でいえば紙を手でめくる作業が大事なのだと思います。
まず、保護者が活字に親しむ姿を見せてほしい
--生徒さんにはどのようなアドバイスをしていますか。
平林先生 生徒が本を選ぶときには、目次を見て判断するように伝えています。目次にはその本のエッセンスが詰まっているからです。また、読書に慣れていない生徒には、「ページをパラパラめくって、カットや図版が多少入っているものから読むといいよ」と言うこともあります。本を選ぶ作業は何気ないことですが、自分で手に取って選ぶことが大事だと思います。ですから、生徒が読みやすそうな本や興味をもちそうな本は、手に取りやすい位置に置くようにしています。展示も、書店やコンビニエンスストアなど物を売る店と同様に、視線を意識して作っています。
--子どもに本を読んでもらいたい、というお悩みにもアドバイスをいただけますか。
平林先生 時々、保護者の方から「うちの子、本を読まないのですが、どうしたらいいですか」と相談されることがあります。そのときに必ずお伝えしているのは、「お父さんやお母さんが活字を読む姿を見せることが大事ですよ」ということです。雑誌でもなんでもいいので、お子さんの前で活字を読んでいる姿を見せれば、お子さんも自然と読むようになると思います。
--学校として力を入れている取り組みはありますか。
今田先生(校長補佐) 中学生のホームルームの時間を利用して、Research(調べる)、Read(読み取る)、Report(表現する)のスキルを伸ばす「R-PROGRAM」を実施しています。例えば、新聞の社説やコラムなどを読んで、自分の考えや意見をまとめて、翌日、クラスメートの前で発表するということをしています。内容は学年が上がるにつれて変わるのですが、日々の積み重ねによって、3つのスキルを伸ばして、高校の探究につなげています。その成果は、学内外の活動の中で大いに発揮されていて、継続することの重要性を改めて感じているところです。
※R-PROGRAMの詳細は同校HP(https://www.rissho-hs.ac.jp/learning/program/)をご覧ください。
平林先生 キャリアデザインも、中学校から始めて卒業後の進路につなげています。中3は職場体験に行くのですが、その前に関連する職業の本を借りて読んでいます。先ほども少し触れましたが、図書館では自分で手に取るところから(本選びが)始まります。目当ての本を探す間に周辺の本も目に入ります。そういう体験に時間を使えるところが、本校のいいところだと思います。電子書籍が普及する今、これだけ開架になっている本校の図書館は、新鮮なのかもしれません。
- この記事をシェアする
