LOVELY LIBRARY 第26回·成蹊中高の図書館《特別編》
情報誌『shuTOMO』2025年12月14日号でご紹介した成蹊中学校・高等学校の「LOVELY LIBRARY」取材時に先生方に伺ったお話を、特別編としてWebでお伝えします。〈取材・撮影・文/ブランニュー・金子裕美〉
通学時間は本を読む絶好の機会
-読書を身近にするためのヒントを教えてください。
上杉先生 「図書室と(高校)生物部を理由に成蹊を選んだ」という男子生徒がいます。その生徒のお父様から「すごく本を読むようになった」と聞いたので、その理由を尋ねたら、「(中学生は)スマホートフォンを持って行けないので、通学時間は本を読むことしか思いつかない」「じゃあ本を読もうね」ということになったそうです。それから毎日、毎日、本を借りるようになり、図書委員にもなって、ブックハンティングにも参加してくれました。元々本が好きな生徒の中には、同じような理由から、「より一層、本を読めるようになった」という生徒もいます。
-生活の中で読書の時間を作ることが大切なのですね。
上杉先生 もう1人、保護者の方が普段の学校生活を気にされていた生徒がいました。「先生のお勧めの本は何かないですか」と相談を受けたときに、とても足が速い生徒だったので、『一瞬の風になれ』(佐藤多佳子著/講談社)や、『夏の庭 The Friends』(湯本香樹実 著/新潮社)など、その生徒の好きそうなテーマや、主人公が同じくらいの年齢の作品を何冊か選んで、お伝えしました。その際に「合わなければ読まなくてもいいですよ」とも伝えたのですが、保護者の方が先に読んで、「面白いから読んでごらん」とお子さんに勧めてくださいました。結局、私がお勧めした本を夏休みに全部読んで、その生徒なりの感想も書いてくれました。読書が習慣になるかどうかは別として、(読書体験に至ったのは)子どもにとって少しでも興味関心のある本を提供できたことと、保護者の方も読んでくださったことがすごく良かったと思います。お子さんに本を読ませたいと思ったら、大人が読んでいる姿を見せる、あるいは、一緒に本を読むといいのではないかなと思います。
読書の扉を開く「身近な人の勧め」
濱村先生 保護者の方が本を読むと、自然と生徒は本を読むんです。私は毎週『国語通信』を発行しています。そこで本の紹介をしています。必ず現代のものと少し前のもの、新書と翻訳、というように、いろいろな種類を混ぜて紹介しているのですが、掲載した本を保護者の方が読んでくださり、「お母さんが面白いと言っていたから」という理由でその本を借りに来る生徒がいます。私は『国語通信』を生徒に配るときに、必ずその内容を説明します。生徒は真剣に聞いてくれるので、耳から興味を持っているのではないでしょうか。身近な人が本を読んで感想などを話してくれるととても嬉しいです。
治田さん 例えば先生方や保護者の方など、生徒にとって身近な方(から受け取る情報)が一番強いのではないかと思います。生徒は先生方が紹介する本を探しに来ます。本を読まない生徒にとって、(先生がお勧めする本は)すごくいい資料になっていると思います。特に探し方がわからない生徒は、言われたままに本を借りていく傾向があるので、先生方や保護者の方など、周りの人たちの勧める本は、読書を始めるきっかけになると思います。
小木曽さん 夏休みの課題図書なども、読書の世界に入るきっかけになるようです。(シリーズの場合)続けて、その次の巻も読む生徒がいます。例えば、濱村先生が三浦綾子さんの『泥流地帯』(新潮文庫)を勧めたり、課題図書として出したりすると、続編も借りていく生徒の姿を見ているので、影響はとてもあると思います。学校の図書室に来てくれれば、わざわざ本屋さんに買いに出向かなくても、すぐに本を借りて読めます。友だちと来たら、二人で借りていきます。友だちにも口コミでちゃんと伝わっているので、先生方がおっしゃる「身近な人の勧め」というお話は、まさにそうだと思いました。
図書室は勉強や読書に没頭できる場所
-中学図書室の雰囲気はいかがですか。
治田さん 勉強が目的の生徒は机を使いますが、集中して本を読みたい生徒は、どちらかというと書架の柱にある椅子に座って読むことが多いです。ソファーもあるのですが、そこでは雑誌や新聞を読んでいる生徒の姿をたまに見かけます。
濱村先生 図書室の椅子は、長く図書室の担当をしていた先生が、生徒のためにこだわりをもって選んだ、スロベニア製のものです。腰を落ち着けて本を読んだり、勉強したりしてほしいという思いが込められています。
-とても座り心地がいいです。
濱村先生 そうなんですよ。
治田さん テスト前は勉強する生徒たちがたくさん来るので、そういうときはちょっと賑やかになりますが、それ以外の日は本を読んだり、勉強したりしている生徒が多く、基本的に静かです。奥にある個別の机の端の席は、1番早く来た生徒が使う、人気の席のようです。
-高校図書室はいかがですか。
治田さん 高校生は勉強を目的に来る生徒が多く、そういう生徒は奥の個別机にバラバラに座って勉強しています。お友だちと勉強したいときは、机が一列に並んでいるスペースを使うというように、自ずと棲み分けができているので静かです。※写真は高校図書室の個別机
成蹊中高で人気の本は?
治田さん 中学生がよく借りて行くのは読み物です。人気の作家は今も東野圭吾です。
小木曽さん 伊坂幸太郎も根強い人気があります。
治田さん 最近は(医療ミステリーで知られる)知念実希人や、若手の作家の方も人気です。話題の本はほぼ揃っていますので、みんなそこから読んでいくという感じです。ポプラ文庫ピュアフル(10代を主人公にした作品が中心の文庫)なども置いています。
上杉先生 中学生は特に、読んでいてスカッとするものを好むと思います。ミステリーは解決するからいいのでしょうね。ただ、名作はやはり授業で扱わないと、なかなか読む機会がないのではないかと感じています。自分がわからないもの、興味がなかったものに触れられるのも読書の良さだと感じているので、モヤモヤを抱えるような名作にも触れてみてほしいと思っています。もちろんそれは読み物だけでなく、分類番号の9番(文学)以外にもいろいろな本を揃えてくださっているので、興味を広げてもらえるといいなと思っています。
濱村先生 たしかに国語便覧に載っているような、誰もが知っている作品を、きちんと読んでいない生徒がほとんどだと思います。書名は知っていても、中身は知らないという生徒が多いので、「それを一から全部読んでください」とは言いませんが、図書室に来ることによって、この作家は授業で名前を聞いたかも、と思い出して、手に取ってみるというような機会があるといいなと思っています。 『国語通信』を通じて、あまり接点がなかった生徒が「私、実は本がすごい好きで……」と話しかけてくれることがあります。中学生あたりですと、まだ一つの小さな世界にとどまっていることが多いので、そういう生徒たちが将来、ビブリオカフェに行って話をして、自分の世界を広げてくれるといいなと思っています。
※写真は政岡依子先生お勧めの「新潮クレスト・ブックス」
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