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2026年2月4日(水)PM 神田女学園中「探究型入試」─自分の言葉で想いを紡ぐ25分間

2026年2月4日(水)午後に実施された神田女学園中学校の『探究型入試』の様子をお伝えします。

2026年2月4日(火)午後。神保町駅と水道橋駅を結ぶ大通りを1本入った閑静な都会の真ん中に校舎を構える神田女学園中学校では、2科目選択(算・国・英)の教科型入試と並行して、昨年度までの名称は「新思考力型入試」、本年度から「探究型入試」という名称に変わった新タイプ入試が実施されました。その様子をレポートしていきます。〈取材・撮影・文/首都圏模試センター編集部〉

入試の進化─7年間の試行錯誤が生んだ現在の形

入試に先立ち、広報部部長の奥田礼章先生にお話を伺う機会をいただきました。

神田女学園の「探究型入試」は、一朝一夕に生まれたものではありません。その歴史は7年前に遡ります。「7年前から思考力型入試を始め、2年前からプレゼン型に移行しました。そして今年から『探究型入試』という名称になりました」

なぜ、入試の形を変え続けてきたのでしょうか。

「探究が好きな生徒は多いんです。そして以前の思考力入試を突破して入学した生徒の多くは、とにかく話好きです。学校の明るさのエンジンにはなってくれるのですが、話が長いことが多い…端的に伝えるスキル、まとめるスキル、理由を持って会話する習慣の大切さを感じるようになりました」

実際に入学してきた生徒たちを見て、学校側が気づいたこと。それは、探究心や好奇心は十分にあっても、それを論理的に整理し、相手に伝わる形にまとめる力が不足しているケースがあったということです。だからこそ、現在の入試形態が生まれました。25分間で自分の考えをまとめ、1分間で発表する──この制約こそが、思考を整理し、言葉を磨き、論理的な思考力を育む訓練になるのです。

「なぜ好きなのか」を問う

奥田先生が挙げてくださった例が印象的でした。

「例えば『戦闘アニメが好き』という女子生徒がいたとします。でも、その中での自分の好き嫌いがあることに気づいていない。疑問も持たず、その理由を説明することもできない…」

表面的な「好き」の先に、本当の探究がある。戦闘シーンの迫力が好きなのか、キャラクターの成長が好きなのか、ストーリー展開が好きなのか。その「なぜ」を問うことから、真の探究が始まります。探究の種と成長の種は、身の回りの様々な想いの中にある──奥田先生のそんな思いは、これまでの新思考力型入試を経て入学した生徒たちにも変化をもたらしました。「家での会話が論理的に、理由を伴うものになったと保護者の方々からお聞きします。想定外の成長だったようです。

静かに始まる思考の時間

入試会場では、受験生たちが配られた用紙に向き合っていました。最初の課題は、自分が好きなものについて紙面に書き出し、まとめること。25分間という限られた時間の中で、受験生たちは自分の「好き」と対峙します。
また、その間教室の外では、受験生のフォローをかって出た高校3年生と奥田先生が、実際の受験生のようすを踏まえて打ち合わせをする場面もありました。

別室での準備─予想外の「真剣さ」

まとめの時間が終わると、受験生たちは別室へ移動します。ここでは、何をどう話すか、声も出して練習できます。そこには大学入試を終えた高校3年生の在校生も待機していました。当初は、ワイワイとアウトプットする時間になると想像していました。しかし今年は逆に、どうまとめるか、まずは「真剣に考える時間」になったのです。
受験生たちは、在校生を前にしてもすぐには話し始めず、自分が書いたものを読み返し、何を伝えるべきか考え込む姿が多く見られました。奥田先生によれば、いきなり騒がしくなることもあれば、今年のように沈黙になることもある──年度によって個性があるそうです。何を話すか、どう話すか、どうまとめるか。我々大人でも難しい、しかし社会では必須のスキルです。生徒の「話す中身・内容と真剣に対峙する様子」はとても大人びて見え、普段の教科学習とは全く別の思考過程のトレーニングになっていることを強く感じました。
時間が経つにつれ、徐々に在校生も交えてアウトプットの時間へと変化していきました。中身を一緒に確認しながら、不安点があれば高校3年生が一緒にまとめる作業を手伝ってくれました。

いよいよ発表─1分間のプレゼンテーション

準備教室からプレゼン教室へと移動し、受験生たちは初対面の試験官を前に、何も見ずに1分間のプレゼンテーションを行います。手に何も持たず順番を待つ生徒は、不安げな表情で教室の外で座っています。
見学させていただいた部屋の1人目は、自分が好きなソフトボールについて語る生徒でした。自分の想いを伝え終わると──
「素晴らしい!56秒!」
試験官の先生の声が響きます。しっかり内容もまとまっていた様子で、その後の質疑応答でも一生懸命に想いを伝えていました。
2人目の生徒は、プレゼンの途中で話すことに詰まる場面がありました。時間も少し延びてしまいましたが、先生方は時間超過だからといって途中で切ることはしませんでした。最後まで、しっかりと話を聞いてあげるのです。自分の話、想いをしっかり大人が聞いてくれる──その安心感があったからでしょうか。その後の質問でも、この生徒はしっかりした受け答えをしていました。

試験後の明るい表情と「できた!」の哲学

試験が終わった後、会場から出てくる受験生たちの表情が印象的でした。緊張した面持ちで入室していった生徒たちが、試験後には一様に明るく、晴れやかな顔をしているのです。
「楽しかった!」「ちゃんと話せた!」そんな自信と手ごたえに満ちた表情で、はじめの想いを紙面にまとめた教室に戻っていきました。

実は、この探究型入試を受験した生徒のほとんどが、既に神田女学園の合格を持っている生徒たちでした。前日の試験や他の入試方式で合格を手にしているにもかかわらず、なぜ彼女たちはこの入試に挑んだのでしょうか。

「準備してきたことを発表できる機会だから」「中学入試の中で、こういう経験ができるのは貴重だと思って」

中学入試という限られた期間の中で、プレゼンテーションを組み立て、発表するという経験。それは合格の有無を超えた、自己実現の場として機能しているのです。試験の中身や狙いは、学校説明会でも必ず話されるそうです。その想いに共感したご家庭が、前半の入試日程で神田女学園の合格を手にした後でも、この探究型入試を受けることを選択されているとのことでした。

奥田先生は語ります。
「『できた!』という想いを強く持っておうちに帰ってほしい。これは教科型の入試も探究型も、入試の形態は問わず、学校として大事にしたいことなんです。」

この言葉に、神田女学園の教育哲学が凝縮されています。入試は選抜の場であると同時に、受験生にとっては成長の機会でもある。自分の想いを言葉にし、それを他者に伝えることができた──その達成感こそが、これからの学びの原動力、自己肯定感になる。その瞬間に立ち会えた気がします。

AI時代だからこそ問われる力

AIが文章を書き、計算をこなし、知識を瞬時に検索できる時代。だからこそ、神田女学園で大切にしているのは「自分の頭で考え、自分の言葉で語る力」です。これは、AI時代だからこそ価値が高まる「人間の力」ともいえるのではないでしょうか。

従来の教科型入試が測ってきたのは、インプットした知識を正確に再現する力でした。一方、探究型入試で問われるのは、自分の興味を掘り下げ、理由を持って説明し、相手に伝わる形にまとめる力です。
神田女学園の探究型入試では、以下のような力を評価し、伸ばすことを目的としています。
①決められた時間内に考えを「論理的に整理」する力(書いた内容も採点対象になります)。
②自分の考えの中から新たな疑問を見出す力(「問を立てる」力も重視されています)。
③プレゼンテーション力(1分間にまとめて自分の意見・想いを相手に届ける力)

試験を監督するのは、全員「探究の授業」を担当する先生方だそうです。日頃から生徒たちの思考プロセスを見守り、対話を重ねてきた専門家。受験生の発表を、単なる結果としてではなく、思考の過程そのものとして評価します。

探究が始まる場所

25分間、自分の「好き」を書き起こす時間。別室で、どう伝えるか考えた時間。1分間、想いを言葉にした瞬間。そして、「できた!」という達成感に包まれた表情。これらすべてが、探究の出発点です。
神田女学園の探究型入試は、そんな学びの物語の始まりと言えそうです。

取材を終えると、新しい後輩たちを応援するメッセージボードに在校生の想いが溢れていました。生徒の想い、学校のぬくもり、先生方の想い…暖かさが詰まった神田女学園の訪問となりました。

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