学校特集
成蹊中学・高等学校2025
掲載日:2025年12月1日(月)
中学・高校の6年間は、人生において「人を創る」大切な時期です。成蹊は「知育偏重では無く、人格、学問、心身にバランスが取れた人間教育を実践したい」という、創立者・中村春二先生の精神を受け継ぎ、「個性の尊重」「品性の陶冶(とうや)」「勤労の実践」を建学の精神に、時代にふさわしい、魅力ある人づくりに努めています。近年では、「グローバルに認知される教養と個性」「協調性のある自立精神と自律的行動」「知的好奇心と科学的探究心」を教育ビジョンに掲げ、答えのない時代に新たな価値を創造する「0 to 1(ゼロトゥワン)」の発想を持つ人材の育成に力を入れています。探究活動、部活動、行事、国際理解教育...。成蹊の多彩なプログラムに心のままに飛び込み、失敗を恐れずに挑戦し、自信を深めている森永真理さん(中3)、相川映人さん(中3)、加藤煌大さん(高1)、渡邊愛子さん(高2)に、仙田直人校長がインタビュアーとなって、4人のチャレンジについて聞きました。
文化祭で生物部に一目惚れ!
〝好き〟を力にリーダーを目指す
仙田校長:加藤さんは、成蹊が第一志望だったと聞きました。その理由を教えてください。
加藤さん:小学生のときに蹊祭(こみちさい/文化祭)を訪れ、「成蹊ってスゴイ」と思ったことがきっかけです。僕は理科全般、特に生物が好きなので、その時に見学した生物部に入部することを目標に受験勉強に励みました。
仙田校長:生物部のイベントは例年、蹊祭で人気ですが、今年も盛況でしたか?
加藤さん:「金魚すくい」が好評でしたし、ペットショップでもあまり見られないめずらしいヘビやトカゲなどに餌をあげる「餌やり体験」も盛況でした。文化祭直前に、部員が海に行って採集した海の生物を見てもらえるようにプールの設置もしました。
仙田校長:生物室に多種多様な生き物がいて、大切に飼育や観察をしているからこそできるイベントですね。蹊祭では理科実験(化学・物理)も人気ですが、それにも関わりましたか。
加藤さん:僕は物理に参加し、「圧力」をテーマにした実験を行いました。一番の目玉は「ダイラタンシー現象」です。40cm×53㎝のケースに水と片栗粉を混ぜ、その上を走ると固まりますが、歩くと沈むという現象の実験を披露しました。皆さんに「おもしろい」と言っていただき嬉しかったのですが、その仕組みを伝えるときに、自分たちの中で噛み砕いて説明することの難しさを痛感しました。
仙田校長:生物部に理科実験、さらにはクラスの出し物もやりながら、蹊祭実行委員も務めたそうですね。
加藤さん:中学時代から自分も蹊祭に関わりたい。作り上げる感覚を味わいたいと思い、実行委員に手を挙げました。蹊祭実行委員は複数のパートに分かれていますが、中3の時は「接待パート」のパートリーダーを務めました。受付や警備を行うパートなので、60人位の人手が必要です。メンバーのシフト表を作ったり、マニュアルを作ったり、仕事ぶりに目を配ったりすることで、人の上に立つ能力、人をまとめ上げる能力が身についたのではないかと思います。高1の今年は「展示パート」のサブパートリーダーを務め、高校の全ての「展示団体」の運営や、展示団体から提出された展示企画や異装についての書類の取りまとめを行いました。その際に、中学の接待パートでの経験が活かせたと感じています。
仙田校長:今年は来校者が1万2000人を超えました。例年よりも人が多くて大変だったのでは?
加藤さん:たくさんの人に来てもらえることはとても嬉しいです。多くの人に笑顔になってもらえる、楽しんでもらえる。そういう視点で見れば、大変だとは思いませんでした。僕自身は喜びの感情のほうが大きかったです。
仙田校長:素晴らしいですね! 蹊祭をはじめ、今回で得た経験を、これからどのように活かしていきたいですか。
加藤さん:蹊祭実行委員にしても、生物部にしても、成蹊でしか体験できないことがまだまだたくさんあるはずです。それらを卒業までにできる限り自分の中に吸収して、蓄えた力を大学や社会で活かしていきたいと思っています。まずは来年、蹊祭のパートリーダーを目指して頑張ります。
運動部と海外留学を両立!
0to1の発想力で課題解決に挑む
仙田校長:中学野球部が16年ぶりに都大会に出場しました。相川さんは速球が強みのピッチャーですが、今年は自信がありましたか。
相川さん:ブロック大会が始まるときは、不安なところもありましたが、試合を重ねていくうちにチームとして手応えを感じていました。準決勝で勝ち都大会出場(第9ブロックでは3位以上)を決めたときは、みんなで喜びを分かち合いました。目標を達成できて、本当に嬉しかったです。
仙田校長:昨年度スタートした、中学生向けのニュージーランド語学研修(12 月後半/12 日間)にも参加していますよね。
相川さん:自分の英語力がどれだけ海外の人に通用するか、試してみたいという気持ちがありました。説明会で聞いた異文化交流にも興味を持ち参加を決めました。
仙田校長:どんなことが印象に残っていますか。
相川さん:ホームステイ(2人1組)です。文化や価値観が違う、初対面の人たちと一緒に生活するのは初めてで、最初はすごく不安でした。実際に、伝えたいことをうまく伝えられないもどかしさを感じたり、会話の中で共通の話題を探すことの難しさを感じたりしたこともありました。でも、留学前よりは相手の英語を聞き取れるようになりましたし、文化や価値観が違っても、相手を理解することで人間はつながっていると実感できたことも成果の一つでした。
仙田校長:今年は女子硬式テニス部も、3年ぶりに全国大会出場を果たしました。森永さんにとってはどのような大会になりましたか。
森永さん:私は幼稚園の頃からテニスをしています。成蹊の硬式テニス部で活動したいという思いから受験に臨み、思いをかなえることができました。中1から団体戦に出ていたのですが、負けた悔しさから、ずっと全国大会出場を目標に練習してきました。全国大会出場(団体戦)をかけた一戦は、チームとしても、個人としても互角の相手。部長の自分が決めなければ、という強い思いで臨みました。
仙田校長:森永さんはどういうプレースタイルなのですか?
森永さん:自分より力が上の人に対しても、最後まで諦めずに粘って点を取りにいくタイプです。応援してくれる人たちに良いプレーで恩返しできるように心がけています。
全国出場を決める一戦は長時間になり、勝った後、「全国に行けるんだよね」とチームの人に確認したくらい実感が湧かなくて。後から、すごく嬉しい気持ちが込み上げてきました。一生懸命努力していれば、結果はついてくるんだなと思うことができました。
仙田校長:二人とも部活動が忙しい中、よく「スタートアップキャンプ in バンコク」(今年度より五島列島からバンコクへフィールドを移して、8月末に実施。中3〜高2が対象)に参加しましたね。
森永さん:私は以前から留学に興味がありました。これまでは部活動優先でしたが、バンコクの日程は全国大会の後だったので、良い機会だと思いました。
相川さん:僕は、中2の「桃李」(道徳)の授業で武蔵野市の探究活動に取り組み、通い慣れている土地だけでなく、見知らぬ土地で一から課題を見つけ出して、解決策となるビジネスアイディアを考えてみたいと思ったからです。
仙田校長:選抜試験は難しくなかったですか?
相川さん:学校で起きている課題を考え、その解決策を自由に書く試験でした。僕は掃除当番をサボる人や休みの人が出てきたときの解決策を提案しました。
森永さん:私は体が小さいので、購買で上級生がどっと押し寄せてきた時に買えなかったことがあり、それを思い出して、購入の列を作るという解決策を提案しました。
仙田校長:選抜は学年に関係なく課題と解決策で選んだところ、参加者31人(応募は71人)のうち8人が中学生でした。現地ではどんな活動をしましたか。
相川さん:僕の班は「交通」について調べました。タイで約30人に街頭インタビューを行い、渋滞が1番の課題だと感じました。ただ、調べてみると、交通インフラが要因なので、ビジネスアイディアを出しても渋滞は解決できない。むしろ、その渋滞を生かすことを考えたほうがいいのではないかと発想を変え、移動中に趣味の時間を作れるサービスを提案しました。
森永さん:私たちのテーマは「物流」でした。事前にタイの物流について調べて現地入りしました。配達も「よく遅れる」と聞いていたので、 そのつもりで話を聞くと、「遅れるのが普通だから困ってない」と、多くの人が言うのです。つまりタイでは、私たちが課題だと思っていたことが課題ではないということがわかり、考え直さなければいけなくなりました。最終的には、タクシーの配車サービスを使ったときに、アプリがわかりにくかった実体験から、外国人観光者向けのわかりやすい配車サービスアプリと、時間がない人のためにお土産購入代行サービスを提案しました。
仙田校長:事前に課題だと思っていたことが、課題ではなくて、発想を転換したのですね。そこで得た気づきや学びを、これからどう活かしたいですか。
相川さん:課題を見つけて、仲間たちと話し合い、何回も失敗して、「このアイディア、ダメだ」と言いながらも、困難を乗り越えてゴールとなるコンテストにたどりつく。そうした最後までやり抜く力は野球とも結びつくので、いろいろな方面でそれを活かしていきたいです。
森永さん:私は自ら「留学したい」と言ったものの、実は苦手な食べ物が多く、初めての海外に不安がありました。人前での発表も苦手で心配でしたが、現地に行くとそんなことをすっかり忘れてしまうくらい夢中になり、挑戦してよかったなと思いました。これからも挑戦する気持ちを大切にしていきたいと思います。
やりたいと思ったら迷わず飛び込む。
やる気さえあればいつでも始められる
仙田校長:最後は渡邊さんです。昨年の8月から1年あまり、さまざまなチャレンジをしてきたと思いますが、その原動力はどこから湧いてくるのですか。
渡邊さん:やってみたいと思ったら、とりあえず飛び込む、ということを心がけています。価値がないかも、やる意味がないかも、と思うようなことも、やってみるといろいろなところで活きてくるからです。
仙田校長:昨年12月に行われた「全国高等学校ビジネスアイディア甲子園」(全国の高校生が参加。新しい商品やサービスなどを発表するコンテスト。6305件が応募)は、どんな大会になりましたか。
渡邊さん:上位7校に選ばれ、プレゼンを行った結果、準グランプリをいただきました。成蹊の「スタートアップキャンプ in 五島」(昨年8月)がスタート地点です。私たちは空き家問題に注目しました。住めない空き家を解体し、そこに五島産のツバキを植えることで、新たな利益をもたらす仕組みを考えました。
まず、五島市役所の方や椿農家などに電話インタビューをしました。大変だったのは、見ず知らずの人に電話をかけ、インタビューのお願いをすることでした。断られることもあり、心が折れそうになりましたが、私はグループリーダーだったので、なんとかやり遂げなければと、気持ちを奮い立たせて頑張りました。ところが当日、大きな台風が五島列島を直撃してインタビューができず、私たちの班だけ、発表する5分前までアイディアがまとまっていませんでした。コンテストも応募したものの、上位7校には選ばれないだろうと、半ばあきらめていたのですが。選ばれたので、自分たちのアイディアを今一度整理し、細部までブラッシュアップしながらプレゼンの仕方を考えました。どんな質問にも答えられるように、さまざまな視点から自分たちのアイディアを見て、質問とその答えを考え、シミュレーションを行いました。自分たちの思いが、審査員の方に届くプレゼンができたことが、受賞につながったのではないかと思います。もう1つ、やってよかったと思ったのは、お金に着目したことです。机上の空論にならないように、季節ごとにツバキの葉や種がいくらになるのか。どのくらいの利益が出るのか。そういう現実的な話を農家に聞き、試算しました。
仙田校長:それが12月のことで、1月には約3ヵ月のカナダ・ターム留学に出発したんですよね。
渡邊さん:そうです。3週間、バンクーバーの語学学校に通い、その後はアボッツフォードという郊外の町で、現地の高校生と一緒に生活しました。期間中、ずっとホームステイなので、最初はすごく不安でしたが、フレンドリーに受け入れてくれました。同い歳のホストファミリーと、毎晩、「フレンズ」というドラマを英語だけで見るということをしていました。最初の2週間ぐらいは内容がわからなかったのですが、帰国が近づくにつれ話の内容がわかってきて、聴く力がついてきたことを実感しました。ホストシスターはケニアからきた養子でしたが、血の繋がりがある親子以上に家族の絆が強く「血の繋がり=家族」じゃないんだ、ということを新たに考えさせられました。
仙田校長:昨年に続き、今年の蹊祭の理科実験も参加していましたよね。
渡邊さん:ケミカルライトの化学反応と蛍光について実験しました。例年以上に多くのお客様が来てくださり、3、2、1で光らせると「おお」という歓声や拍手が起きました。それは嬉しかったのですが、実際これはすごく専門的なんです。大学レベルの話をまず自分たちが理解することが難しかったですし、化学をほとんど習っていない小学生に、どうすれば面白く伝えられるか、ということを考えるよい機会になりました。
仙田校長:今後、渡邊さんがどんな進路を選択するのか、楽しみです。
渡邊さん:中学受験の頃は、ただ紙と鉛筆だけの勉強で、本当に勉強が辛くて、先が見えない状態でした。自分からやりたいと思うこともあまりなかったのですが、成蹊に入ると、いろんなことにチャレンジできる環境が整っていて、挑戦する機会が沢山あります。その頑張りに対して、先生方もサポートしてくださるので、やりがいや達成感をすごく感じています。それが今、積み重なってきて、まだ高校生ですが自分はこんなことができるという自信がつきました。成蹊に入って本当によかったなと思っています。
仙田校長:本校では「本物に触れる学び」を大切にしています。授業での実験や探究活動、留学生との交流のほかに運動施設も充実しています。部活動に所属している生徒が多く、全国クラスの実力を誇るクラブも多数あります。また、文化部では理系や芸術系のクラブの人気が高く、毎年志望動機に「生物部に入りたい」と書く生徒がいます。
行事も工夫を凝らしており、中学段階は「夏の学校」(林間学校)として独自に開発した特色あるプログラムを実施。さらに、ニュージーランド短期留学やカナダのターム留学、ケンブリッジ大学の研修など10を超える国際理解教育プログラムも充実しています。生徒が何かしらの琴線に触れて、そこを起点に、さまざまなことに挑戦しながら、可能性を広げる6年間であってほしい。人を創る、恵まれたキャンパスに、ぜひ一度、足を運んで、その熱気を感じてほしいです。
