学校特集
女子聖学院中学校・高等学校2025
掲載日:2025年12月3日(水)
JR山手線「駒込駅」から徒歩7分。1905年の創立以来、キリスト教に基づいた人間教育を実践し続ける女子聖学院は「Be a Messenger〜語る言葉を持つ人に〜」を教育目標に掲げ、自らの考えを持ち、自らの言葉で発信する力を備えた人材を育成しています。その同校が、重点的に取り組んできた英語教育と国際理解教育をさらに深化させるため、これまで行ってきた「英語表現力入試」を廃止し、2026年度から新たに「スカラシップ英語資格利用入試」を実施します。同入試を導入する理由や、進路を左右する英語学習のマップともいえる「マイルストーン」について、広報室長の大津佑万先生と英語科の滝澤佳代子先生にお話を伺いました。
新設された「スカラシップ英語資格利用入試」とは?
■2026年度入試から英検資格を有効活用できる
女子聖学院は開校以来、キリスト教の教えを土台とした建学の精神「神を仰ぎ人に仕う」を大切に、「自らの賜物を用いて他者と共に歩むことのできる女性」を育てる教育方針を貫いています。
ミッションスクールとして120年の歴史を持ち、英語の表現力に磨きをかける英語教育と国際理解教育に定評がある同校は、生徒の英語力を伸ばす環境を充実させてきました。2016年度から実施してきた「英語表現力入試」は、当時全国的にも珍しかったレシテーションを取り入れるなど、時代を先取りしたユニ−クなものでした。
大津先生:「英語教育はミッションスクールである本校の、開校以来のミッションです。だからこそ、世界との繋がりが重要性を増す今、本校のアイデンティティをいっそう強化していきたいとの思いから『スカラシップ英語資格利用入試』を導入することにしました」
滝澤先生:「本校の英語教育は教育目標にある通り、語るべき言葉を持ち、それを英語で表現できる力を養うことを目的としています。4技能の基礎を大事にしながら、自分の思いや考えを英語で表現する力を着実に育てています。ただ、英語の表現力とは『技術とマインドの合わせ技』です。語彙力のハードスキルと、表現力のソフトスキルが合わさってはじめて成り立つもの。そうした観点から、英語入試のスタイル変更に至ったのです」
「スカラシップ英語資格利用入試」は、2科(国・算/各100点)に英検4級以上の取得によるみなし得点(満点100点)を加えた、合計300点満点で合否判定を行うものです。同入試の狙いと特徴について、大津先生は次のように話します。
大津先生:「『スカラシップ英語資格利用入試』の国・算の筆記試験は、同日午後の第6回入試(国・算2科)とまったく同じ問題で、その得点に英検級がみなし得点として追加されます。英検級をお持ちの受験生はそれを活用して受験できるので、より有利になります。また、この入試を利用した生徒は、入学後にネイティブ講師による取り出し授業が受けられるなど、さまざまな特典も利用することができます。英語を積極的に学びたい受験生には、ぜひ挑戦していただきたいですね」
大津先生に伺った「スカラシップ英語資格利用入試」の概要と入学後の特典、そして同校が展開する英語教育について以下に列記します。
2026年2月4日(水)午後...2科(国・算) 募集人員:5名
●英検級によるみなし得点(※)を加えた合計300点満点で判定。英検取得時期は不問。
※英検4級...70点/3級...80点/準2級...90点/2級以上...100点
●成績優秀な受験生はスカラシップ合格とし、一般合格へのスライドあり。
1 ネイティブ講師による取り出し授業(3級以上保持者)
取り出し授業は、毎週2時間。
2 教科横断型オンライン英会話授業(4級以上保持者)
一人ひとりの力に応じて実施。上位者には、アカデミックなテーマを英語で議論(週に1回/放課後1時間)。
3 ターム・年間留学プログラム奨学金
留学プログラムの参加者には、スカラシップ奨学金を支給。
4 英語学習アドバイザー制度(4級以上保持者)
進捗の確認やアドバイス、継続的なサポートを受けられる。保護者も相談可能。
●英会話(中1〜中3)...Wネイティブ体制+習熟度別授業
週に1回、ネイティブ教員が2人体制で行うオールイングリッシュの授業を実施。1クラスを2分割した習熟度別クラス編成のため、一人ひとりのレベルに合ったきめ細やかな指導を受けることができる。
●オンライン英会話(全学年)...英語を伝える・聞く力を鍛える
ネイティブスピーカーと1対1で会話する、オンライン英会話レッスンを実施。自分のペースで話せることや相手に英語が伝わる喜びを感じることで、英会話の敷居を低くし、積極的に英語に触れるマインドを養う。
●レシテーションコンテスト(中2・中3)...英語による表現力を磨く
暗誦用の文章をサンプルの中から選び、クラス全員が予選に参加。選ばれた各クラスの代表者が校内で行われるコンテストに出場。英語の表現力を養う。
●スピーチコンテスト(高校)...英語による表現力を磨く
英語でエッセイを書き、各学年から選ばれたファイナリスト3名が校内コンテストに出場。ファイナリストはネイティブ教員からマンツーマンで指導を受けて本番に臨む。コンテストはすべて英語で進行され、外部から招かれたネイティブ講師がジャッジを担当。
●アカデミック・ライティング(高2・高3)...英語での思考力、表現力を身につける
高校英語では、「語るべき言葉を持ち、それを英語で表現すること」を目的とする。思考力を育てる集大成の選択授業「アカデミック・ライティング」では、ネイティブ教員によるオールイングリッシュの授業が行われ、与えられたテーマについて英語でエッセイを書き、国際社会で通用する実践力を養う。
■英検取得は、大学入試の合否を左右する「実質的な武器」に
知性と教養を兼ね備えた発信者を育てるため、伝統行事として長年続いているスピーチコンテストなど、同校の英語教育は体系的かつ実践的なカリキュラムで構成されています。しかし、近年、大学受験を取り巻く環境が大きく変化する中で、英検(実用英語技能検定)の重要性が急速に高まっていることも事実です。
滝澤先生:「表現力を磨くソフトスキルは、本校の得意技です。しかし今や、多くの国立大学や難関私立大学の入試において、英検が一般選抜の加点対象になったり、英語試験免除などの優遇を受けられたりするケースが増えてきました。総合型選抜や学校推薦型選抜の出願資格において、英検取得が条件となっているケースもあります。英語力を客観的に証明できる英検は、合否を左右する『実質的な武器』として認識されるようになってきたのです。つまり、英検取得というハードスキルも相応に伸ばしていくことが、生徒の進路指導においても重要な課題となっているのです」
青山学院大学、学習院大学、国際教養大学、中央大学、法政大学、明治大学、立命館大学、早稲田大学など、500校を超える大学で優遇措置を実施中。
(日本英語検定協会調べより。https://www.eiken.or.jp/teap/lp_01/)
大学入試の変化に合わせて、英語学習のための「マイルストーン」を策定
■望む進路の獲得に向けた「マイルストーン」とは?
そこで、中学では英検準2級、高校は2級(できれば準1級)の取得を目標に掲げ、望む進路を実現するために英語学習の「マイルストーン」を策定しています。「マイルストーン」とは「里程標」のことで、到達点に至るまでの中間目標などを指します。
滝澤先生:「英検を有効活用するには、計画的な級の取得が欠かせません。中高6年間をかけて英検を軸に英語力を伸ばしていく道筋を示すことで、さらなる英語教育の充実を図りたいと考えています」
実は、同校では10年前にも英検取得のための「マイルストーン」を策定していました。当時は、今ほど英検の重要性が認知されておらず、「あったらいいね」という程度の認識。大学入試での優遇措置も多くありませんでした。それでも、「中学英語(4技能)の体幹を鍛える」という方針の下、中3で「英検3級を満点合格」をスローガンに掲げていました。
滝澤先生:「ところが、『あったらいいね』の英検級が、今や『なくてはならない』資格になったのです。特に難関大学や、国際系の学部を志望する生徒にとって、準1級の取得は大きなアドバンテージになります」
現在策定中の2026年度版「マイルストーン2026」は、単語学習に重きを置いたものになっています。
滝澤先生:「生徒たちに聞くと、とにかく『単語学習が辛い』と。例えて言うなら、『毎日ランニングすれば痩せるよ』と言われてダイエットをするような辛さです。加えて、単語を覚えてもすぐにはテストの結果に繋がらないので、生徒たちは達成感が得られにくい。英語は完全に積み重ね型学習の教科ですので、目標を持たせて成長させることが重要です。そこで、年間に覚える単語数を数値化することで、わかりやすい目標を設定しました」
■キーワードは「毎日」と「積み重ね」
英検は年3回行われていますが、そのための学習は普段の定期テストに向けた学習とは別軸です。キーワードは「毎日」と「積み重ね」。どの級をいつまでに取るか、学年ごとに目標を設定することで、生徒たちに英検は「きちんと努力すれば取得できる」ものと意識させています。さらに、英語学習は他教科の学習とは別のスピード感が必要と滝澤先生。「英語は努力を積み重ねれば、成果が得られる教科です。実技教科ともいえるため、日々、着実に努力を続ければ目標に到達できるのです」と。
中3で英検準2級取得を目標にした2026年度版「マイルストーン2026」を達成するためには、次のような「努力」と「積み重ね」が重要になります。
1 単語数の年間目標を設置...中3で4000語
中1=1300語。中2=1200語(計2500語)、中3=1500語(計4000語)。
2 週1回の英検単語のテスト
年間1500語のペースで、1週間に75語を覚える。
3 毎日15分、1日15個の単語を覚える
滝澤先生:「単語は使わなければ忘れてしまいます。年間1500語を3回復習、4500語を1年300日でマスターするとして、1日15単語。ですから、ご家庭でも保護者の方からお子さんに『15単語を暗唱してみて』と声かけしていただきたいのです。これは一番手間のかからない方法ですし(笑)、毎日続けることが何よりも大事です。これを6年間続ければ、計算上は7000語以上の単語をクリアすることになります。中1の1500語の中にはペン、ツリーなど、すでに和製英語化した単語が多く入っていますので、どんどん先取りして進めていくことができます。同じ1500語でも、高校英語になると抽象的な概念の単語が入ってくるので、時間もエネルギーも2倍以上かかります。できる部分はどんどん先取りしていくことが有効です」
英単語7000語と聞くと驚くかもしれませんが、「英検の準1級や、難関私立大学の英語入試では、単語量が非常に大きな武器になります」と、滝澤先生は言います。
■「環境」と「生徒の熱意」があれば、中学で英検準2級、高校では準1級も取得可能
滝澤先生:「これだけ英検が大学入試に影響するようになると、今後は中学で英検準2級、高校で準1級取得がノーマルな基準になるかもしれません。ただし、準1級の取得はかなりハードルが高く、1回で受かる生徒は本当に少ない。年3回実施される英検は、3年間で9回挑戦できるのですが、7回チャレンジした、という生徒もいます」
ただし、生徒の熱意と、それを支える環境さえあれば、「高校で準1級も可能」と滝澤先生と言います。
同校が用意している「環境」として、年3回実施してされる英検の受験時期に合わせて、それぞれ英検講座を開講しています。1次の問題演習や英作文対策のほか、1次合格者には2次試験のコツがわかるオリエンテーションなど、一人ひとりの状況に合わせた手厚い英検対策を行っています。さらに、全生徒を対象に、学年の区別なく参加できる英文法の「スパイラル講座」も開設しています。
滝澤先生:「例えば、中1の生徒が3級を受けようとすると、中2・中3の英文法の知識が必要です。つまり、学年を越えて上位級を受ける場合、その級相応の基礎的な文法知識を知っていなければなりません。そこで、中学生でも高校文法が習え、高校生が中学文法を復習することもできる『スパイラル講座』を再開しました」
滝澤先生が受け持つ「スパイラル講座」を受講して、高3で英検1級を取得した卒業生が2名います。二人とも中学生の頃から「将来、英語を生かした仕事をしたい」という熱意が人一倍溢れている生徒たちでした。今、そのうちの一人は世界有数の外資系金融会社に、もう一人はアメリカの大手情報サービス会社で活躍しています。
滝澤先生:「高3で1級を取得するためには、相当なガッツが必要です。二人とも帰国生ではありません。それでも、彼女たちには『絶対1級を取る!』というガッツとモチベーションがありました。そして何より、二人とも英語の表現力が素晴らしかったのです。英語ができる生徒はたくさんいますが、並外れた表現力というソフトスキルがあったからこそ、今、世界を舞台に輝くことができている。ソフトスキルとハードスキル、今はその両方が求められる時代になっているのだと思います」
英検の学習を通じて培われた英語4技能は、大学入試だけではなく大学での学びやその後の就職活動、さらには国際社会で活躍するための礎となるはず。すでに大学入試のスタイルが大きく変化している今、英検取得が大学入試での大きな武器になることは間違いありません。
滝澤先生:「新年度から始まる『マイルストーン2026』は、バージョンアップしていきます。生徒たちの進路を左右する英検取得に向けて、学校全体で一丸となって取り組んでいきたいと思っています」
