学校特集
明治大学付属世田谷中学校・高等学校(現・日本学園中学校・高等学校)2025
共学化に向けて準備着々
掲載日:2025年7月17日(木)
1885年に創立された日本学園(東京都世田谷区)は、来年度2026年4月1日から明治大学系列校となり、「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」と校名も変わります。女子を受け入れて共学校となるため、現在は新年度に向けてさまざまな準備を進めています。伝統を大切にしながら常に時代の先端をゆく教育を実践してきた日本学園の新たな第一歩に、大きな注目が集まっています。語学留学などの国際理解教育の今後の展開と、来年度に向けて準備が整いつつあるソフト・ハード両面について、国際理解教育委員長の勝田宏毅先生と情報推進部長・工藤さやか先生に話を伺いました。
創発学の一環として国際理解教育に注力
京王線・明大前駅から徒歩5分の便利な場所にある日本学園。来年度、2026年4月から明治大学の系列校となり、「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」と校名も変わります。さらに女子を受け入れて共学となるため、受験生の注目が集まっています。
【中3は全員オーストラリア語学研修に参加】
創立者・杉浦重剛の「人は得意な道で成長すればよい」という精神に基づいて、日本学園が2005年から続けてきたのが「創発学」。「体験」を出発として調査・研究、取材やまとめを通して「創造する力」を育み、わかったことを表現・発表する「発信する力」を身につけるオリジナルプログラムです。2003年から開発を始め、2007年にスタートして約20年続けてきました。課題を見つけて個人で、あるいは周囲を巻き込んで探究して発表する活動で、フィールドツアーや修学旅行などの行事も創発学の一環です。

国際理解教育も創発学の一つという位置づけであり、自国の文化をしっかりと理解したうえで海外の文化に触れるMGP(明大世田谷グローカルプログラム)と総称し、国際感覚を養うためのさまざまなプログラムを実施しています。「今後は今まで以上に選択肢を増やして生徒の興味関心の間口を広げていきたい」と国際理解教育委員長の勝田宏毅先生は話します。

中学3年生は全員、3学期末に約2週間のオーストラリア語学研修に参加し、ホームステイしながら現地校に通って授業を受けます。広いキャンパスの中にあるワイナリーを見学したり、隣の牧場でバーベキューをすることも。午前中に授業を受けて午後からビーチバレーやサーフィンなどのアクティビティに連れて行ってもらう生徒もいます。「短い期間ではありますが、何を見ても聞いても新鮮で、思い切り楽しんで帰ってきます。ですから高校で実施している有志の留学に参加したい、と手を挙げる生徒も多いですね」(勝田先生)。
昨年度まではアデレードで実施していましたが、今年度の中3は120人と、これまでの2倍以上の人数になりました。そのため今年からは場所を変えて、西海岸のパースでこれまでの内容をさらにブラッシュアップしたプログラムを実施する予定です。
【高1は希望制で3か月のターム留学を実施】

高1の3学期に行う希望制のオーストラリアターム留学「Study Abroad」は、オリジナルのプログラム。3学期の3か月間をアデレードで過ごします。事前学習として留学前にオンライン英会話を受講し、現地で最初の2週間は日本学園の生徒のためだけのクローズドの英語のレッスンを受講します。「現地レッスンの内容はいわゆるサバイバルイングリッシュのようなもの。こんな場面ではこのように言うといい、という英会話術や、現地の交通系ICカードの使い方など、現地で暮らすために必要なことを学びます」(勝田先生)。
そうして必要な知識や会話力などを身につけてから、残りの8週間はホームステイしながら現地校で
一緒に授業に参加するのです。この語学留学は私学財団の助成金を利用できるため費用も通常よりおさえられるのもメリット。以前は14名の定員が埋まらない年もありましたが、昨今は積極的な生徒が増えたため、選抜になっています。
「3か月間という長い期間を現地で過ごすので、リスニング力が飛躍的に向上します。『最初は何を言っているか分からなかったけど、ほとんど聞き取れるようになりました』という生徒も多く、英検準2級のリスニング試験は8割ほど聞き取れるようになっています。言葉が多少分からなくても現地の子と仲良くなって海外に踏み出すハードルが下がり、帰国後に『大学では1年間留学にいきたい』と言ってくる生徒も多いですね」(勝田先生)
ほかにもフィリピンとオックスフォードで、それぞれ1~2週間の短期語学研修を実施しています。海外からの留学生が講師となってコミュニケーションをとるイングリッシュキャンプにも希望者を募って参加。7月末に2日間にわたって行うもので、5~6人グループに留学生が入ってトークセッションを行います。今年は中3と高1の希望者30名が参加予定です。
【明治大学系列校向けのプログラムも】
ふだんの授業でも英語教育には力を入れており、中高ともにネイティブによる授業を週1~2回実施しています。さらに年に5~6回は30分間のオンライン英会話も行い、発話の機会も増やしています。こうした取り組みに加え、共学化に向けてさらなる国際理解教育の拡充を図っているという勝田先生。「留学プログラムの選択肢を増やし、半年~1年の中長期の留学も実施したい。数年後の実現に向けて、調整を始めたところです」と語ります。
さらに、明治大学の系列校となることで留学や学びの機会は広がります。「明治大学付属明治高等学校を中心に、明大付属八王子、明大付属中野の3校が8月に実施している合同英語プログラム『Global Affairs Program』にもお声がけいただいています。これは夏休みに数日間、宿泊で高校生が参加するプログラムで、国際問題をテーマに英語で学び、自分の意見を英語で相手に伝えるものです。今年度はまず見学に行き、再来年からの参加を目指しています」(勝田先生)。
明治大学の海外留学支援プログラムについて、明治大学国際教育センターの職員による出張講義や留学準備講座などの実施に向けて準備を進めています。語学教育や留学についても高大連携を推進し、国際理解教育の幅もどんどん広がっていく予定です。
共学化に向けて着々と準備が進む
【女子受け入れに向けて大幅にリフォーム】

来年度の入試は2回実施しますが、男女で募集人数を分け、約60人ずつの募集となります。共学化に向けて、先生方がどんな準備を進めているのか、情報推進部長・工藤さやか先生に伺いました。
「最初に制度をどう整えるかというところからスタートしました。共学化経験のある先生を招いて、設備をどのように整えるか、名簿を男女別にするのか男女混合にするのかといった細かい部分についても話を伺いました。部活を男女で分けるのか、宿泊行事をどのように行うかなど、決めることは山のようにあります」。
そして、女子を受け入れるために、ハード面では女子トイレや女子更衣室の設置から始めました。新しく建築中の新校舎はもちろんですが、登録有形文化遺産に指定されている1号館は男子トイレしかなかったので、各階に女子トイレも設置するなど全体に大幅なリフォームを行い、女子受け入れに向けて着々と準備が進んでいます。
現在、京王線の明大前駅からいちばん近い位置に正門を建設中で、生徒の通学にも細かい目配りをしています。また、防犯にもこれまで以上に気を配る必要があるため、防犯カメラを設置して外部からの侵入を防止しています。
【女性教員を増員しきめ細かい対応が可能に】
ここ数年で教員の数も増やしており、中には他の大学付属校や共学校で教えてきた経験を持つ先生もいます。そうした先生方はもちろん、外部の講師を招き、女子生徒への声がけや指導について、共学校や付属校での事例を教えてもらい、皆で参考にしています。

男子校は男性教員のほうが多いものですが、ここ数年は女性教員の採用を増やしているため、専任だけでも女性教員が各学年に2~3人ずつ入れる形になっています。
生徒一人ひとりをしっかり見ながら指導したり声をかけるのは今まで通りですが、女子生徒は体の成長とともに心が不安定になる可能性もあるので、保健室や相談室の体制も強化しています。
日本学園の強みの一つは面倒見のよさで、風通しがよく先生と生徒の距離が近いことも魅力です。「共学になることで教員が変に身構えてしまうことなく、これまでのような風通しのよい校風や明るい雰囲気を大切にしていこうと考えています」(工藤先生)。
【校舎の新設やリフォームで快適な教育環境を整備】
新校舎だけでなく既存の校舎もリフォームして、各フロアに「ラーニングコモンズ」というフリースペースを設置します。グループワークやプレゼンテーションの練習や作業スペースとしても使えるし、休み時間や放課後の居場所や過ごし方の選択肢も増えるでしょう。食堂には大型モニターを設置し、「ランチ・アンド・スタディルーム」として放課後は自習室として展開します。この食堂は職員室の目の前なので、生徒が質問に来たらスタディルームで教えるなど、多様な使い方ができるのです。「私たち教員も、新校舎ができることで学習指導や面談もやりやすくなる、と楽しみにしているんです」と工藤先生は笑顔で話します。
学校説明会では明治大学との連携や内部進学についての質問に加え、受験生女子の保護者から「制服の着こなしや髪型などを含め、校則は厳しいか」という質問が多いそうです。
「あまり厳しくありませんが、皆で決めたルールはきちんと守ろう、と指導しています。興味関心を磨いて伸ばして将来につなげることを大事にしているので、男子・女子関係なく『この部活に入りたい』『文化祭が楽しみ』など、中学生活に希望と憧れを持ってワクワクしながら入学してほしいですね。新しいことにチャレンジするのが好きで、好きなことを突きつめたいという気持ちのあるお子さんにぜひ入学してほしいと思っています」(工藤先生)。