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学校特集

三田国際科学学園中学校・高等学校2025

学園文化に「科学」がもたらす意味と価値

掲載日:2025年5月28日(水)

 この春、10期生を送り出した三田国際学園が、「三田国際科学学園」に校名を変え、新たな一歩を踏み出しました。校名に「科学」が加わったことへの期待は大きく、今年の志願者数は3000人超。元気いっぱいの新入生が、希望に満ちた学校生活をスタートさせています。
「THINK & ACT」「INTERNATIONAL」「SCIENCE」を教育の軸に据え、「発想の自由人」を育てるというコンセプトは変わりません。「校名の改称は、これまで以上にサイエンスとインターナショナルの推進に努め、より良い環境の中で生徒たちの育成に努めていくという決意の表れです」と語るのは副校長の今井誠先生(広報部長)。
 いよいよこの秋には、発想の拠点となる「Zero to One(ゼロワン、以下『ゼロワン』)」も竣工し、「THINK & ACT」の活発化に拍車がかかることでしょう。学園文化の礎にある「科学」の意味と価値について、副校長の今井先生、教頭の辻 敏之先生(MST部長)、中学教頭の内田雅和先生(広報部副部長)にお話を伺いました。

受験者増で「科学」への期待を実感

「三田国際学園」から「三田国際科学学園」へ。校名改称の背景を最初に伝えたのは、昨年11月の「入試傾向説明会」でした。三田国際学園の立ち上げから関わり、広報業務に携わってきた副校長の今井誠先生は「満を持しての校名変更の発表でしたが、受験生の保護者の方からどんな反応をいただくことになるのか、ものすごく心配でした。ですから、拍手が起こった瞬間は本当に嬉しかったですね」と、当時を振り返ります。その拍手が本物だったことは、入試結果にも表れました。

三田国際_副校長・広報部長 今井誠先生
副校長・広報部長 今井誠先生

今井先生:今春は出願者数、受験者数ともに昨年を上回りました。特にインターナショナルサイエンスクラス(ISC/中2からMSTCに在籍可能)への出願がものすごく伸びました。メディカルサイエンステクノロジークラス(MSTC)への出願も昨年以上に伸び、サイエンスを強化することへの期待を感じています。尚かつ、第1回目の2月1日午前入試(ISC・IC)を、多くの方が受けてくださいました。つまり第1志望の受験生が多かったということです。

 受験生をもつご家庭が、同校に信頼を寄せる理由の1つに、「自律した学習者を育てる土壌」があります。

・多様性に富んだ環境
入学したその日から多様なバックグラウンドの生徒や先生と関わり、英語が飛び交う日常を楽しんでいます。豊かな国際感覚も自然と身につきます。

・「THINK & ACT」の実践
入学してすぐに行われるオリエンテーション合宿やMIF(学園祭)での発表、ゼミナールや探究活動など、日々の授業や活動の中に、自らの学びたいことを考える機会や実践する機会が散りばめられています。小さな気づきから、高い評価をいただく研究や活動に発展することも珍しくありません。没頭できるものと出会った生徒は、自身の力で自分の可能性を広げています。

三田国際_ゼロベースからでも使える英語が身に付く英語環境
ゼロベースからでも使える英語が身に付く英語環境

・使える英語の習得
ゼロベースから海外大学を目指せる英語力を習得できる環境です。全クラスで習熟度別の英語の授業が行われており、中3次のオーストラリアターム留学は全クラスの希望者が対象です。

・物事を考える手段としてのサイエンスを学ぶ
「探究」の技法である科学的アプローチサイクルを習得する「サイエンスリテラシー」(中1/全クラス)の授業に始まり、中2・中3ではクラス別のプログラム<「基礎ゼミナール」(ISC)、「Academic Seminar」(IC)、「基礎研究α」(MSTC)>を通して、科学的アプローチサイクルを実践します。中学校で基礎を身につけ、高校では実社会と接続しながら視野を広げ、課題発見・解決のサイクルを自ら回していく体験は、卒業後の長い人生を支える力になります。

DDPに加えAPの実施へ

 三田国際科学学園の名が示すとおり「国際」と「科学」の両面が非常に充実しており、この春、卒業した10期生も、それぞれの思いを胸に進路を拓いています。

今井先生:JSEC(高校生・高専生科学技術チャレンジ)2023で上位入賞し、日本代表に選出されて、昨年、ISEF(国際学生科学技術フェア/2024年度はロサンゼルス)2024で研究成果を発表した生徒(MST)は、東京大学に推薦入試で合格しました。進学塾で猛勉強して、本校の入試を突破、辻先生と出会ってサイエンスにはまり、専門分野(計算生物学・バイオインフォマティクス)の研究を始めたことから、日本の論文だけでなく世界の論文も、辻先生と一緒に読みこなしました。その過程で専門用語を身につけて渡米。自分の研究成果を英語で発表したばかりか、海外の科学者の方々との質疑応答もこなしてきたことには驚きました。自ら学ぶ姿勢があれば、どんどん変わることができる典型だと思います。

 今春も、海外大学に120名を超える合格者(卒業生数224名)を出しました。

三田国際_複数のInternational Teacher(IT)が生徒たちの学校生活をサポート
38名(2025年度)のInternational Teacher(IT)が生徒たちの学校生活をサポート

今井先生:昨年アイビー・リーグの一角、プリンストン大学に進学した生徒(ISC)は、陸上部でインターハイに出場しています。陸上が好きなので、大学でも続けたいという希望があり、当初は日本の大学に進学するつもりでした。しかし、生きた英語を話す帰国生たちと日常的に触れ合う中で、海外大学という選択肢もあることに気づき、高2の12月から海外大学進学を目指しました。
 志が高く、「海外大学で、アジア人でも世界で戦えることを自分の肉体で証明したい。単に速くなるだけじゃなく、きちんと学んで、スポーツ科学や心理学の観点から研究し、根拠をもって証明したい」と話していました。今年もスタンフォード大学やペンシルベニア大学などに合格者を出し、さらに4年連続で、卒業生が柳井財団の奨学生に選ばれています。

 海外大学へのニーズは、今後さらに高まることが予想されています。現在実施している西オーストラリア州教育省と提携した、デュアルディプロマプログラム(Dual Diploma Program/通称DDP)に加え、ニーズが高いアメリカなどの大学進学の際に有利となるAP(Advanced Placement)プログラムも今後スタートします。

この秋、0から1を生み出す発想の拠点「ゼロワン」が完成

 さらにこの秋、待望の「ゼロワン」が完成し、2学期から生徒の利用が始まる予定です。

三田国際_教頭・MST部長 辻敏行先生
教頭・MST部長 辻敏之先生

辻先生:私が「ラボ棟(取材当時の仮称)」と呼んでいるので、生徒たちからも「MSTの中核になる場所なんでしょ」と言われることが多いのですが、そうではありません。作りたいのは、いわゆる理系の実験室ではなく、「発想の自由人を育成する」という本校の理念をカタチにする場所です。

 同校では、問いや仮説を立てて、調査・実験や分析・考察を行い、構築した自分の考えを表現するという、科学的アプローチサイクルを回すことを大切にしています。

三田国際_今年の秋に完成するラボ棟の予想
今年の秋に完成するゼロワンの完成イメージ

辻先生:生徒たちが「ゼロワン」に足を踏み入れると、スイッチが入って思考モードになるような......。考えを深めたり、議論したりするスペースを、多様な生徒のニーズに対応できるような形で作ります。また、1階には最新の3Dプリンターや金属加工機などを備える予定です。「デジタルファブリケーション」といわれる分野に踏み込んで、これまでできなかった表現、出力ができる場所にしていきたいと考えています。

「そもそも、校舎に"考えるために足を向ける場所"があるってすごいことじゃないですか」と辻先生。実は昨年、MSTで受け継がれてきた「放線菌の培養」の研究で大きな成果をあげたこともあり、この「ゼロワン」が、さらなる推進力になると期待を寄せています。

三田国際_実験を通じて疑問をとことん追求できるMST
実験を通じて疑問をとことん追究できるMST

辻先生:「放線菌の培養」は、1期生の時に立ち上げた「微生物班」で受け継がれてきた研究テーマの1つです。これまでも生徒の気づきをもとに、光を当てたり、何かを混ぜたりしながら、菌の成長具合を観察してきましたが、その生徒(MSTC/高2)は、これまでになかった発想でアプローチし、高い評価を得ました。
 注目したのは「培地」です。普通はシャーレに寒天を入れて、固まった培地に菌を塗ります。寒天の濃度の標準は、1.5%から2%ぐらい。「なぜ、その数値なんだろう」と思ったことがきっかけでした。「さらに濃度を上げて、固くしたらどうなるのだろう」という好奇心から、3%、5%......と濃度を上げてみると、放線菌の種類によって生え方に違いがあることに気づきました。
 一般的な放線菌は、培地に根っこみたいなものを生やしてから増えていきます。その菌は培地を固くすると根っこを生やせないため増えないのですが、一部、根っこを生やさない菌がいることに気づいたのです。根っこを生やさないのなら「培地」の固さに関係なく菌を増やせるのではないか。そう考えて確かめていくうちに、わかってきたことをまとめました。
 文献を調べると、固い寒天で培養しようと考えた人はいなさそうであることがわかり、「つくばScience Edge2025」に応募すると、国際会議場で発表する8名に選ばれました。その発表で、審査員のお一人に難培養微生物研究の第一人者の方がいらして、「世界で初めてだと思う」と言ってくださいました。おそらく選考過程で要旨を目にして、事前に調べてくださったのだと思います。生徒は嬉しそうでした。
 最終的に「創意指向賞」を受賞。講評として「創意指向性にふさわしいアイデアと、それをロジックにする上で、どういうことが起きているかを観察する力が非常に優れていました」という言葉をいただきました。

 振り返れば「不思議に思うこと」と「やってみようと思うこと」、この2つが出発点でした

辻先生:たかだか寒天を固くして、菌の様子を観察しただけですが、なぜ生え方が変わるんだろう、という問いが立つと、仮説を立てて、検証して......というサイクルが回り始めました。目の前で起きていることをよく観察し、きちんと言語化して、表現する。そこまでやったからコンテストでも評価されたのだと思います。そのエピソードは、まさに本校の教育を体現したものであると感じています。

日常の小さな気づきが大きな研究に

 もう1人、ドローンのプロペラを研究している生徒(MSTC/高2)がいます。

三田国際_トロイダルプロペラの設計の様子
トロイダルプロペラの設計の様子

辻先生:彼は学校行事などで映像を撮って編集する「映像班」で活動しています。研究のきっかけもその活動にありました。小型のドローンを飛ばして撮影したいけれど、プロペラ音がうるさくてライブ映像には使えない。なんとかできないかな、と思ったことから始まったのです。

 もともと消音性能が高いトロイダルプロペラに目をつけて、その改造に取り組んでいます。

辻先生:調べてみると、ザトウクジラの胸びれのギザギザが、空気抵抗が少なくエネルギー効率を上げるため、その特徴を船のスクリューに応用した例があるんです。それをトロイダルプロペラに生かせないかと考えて、プロペラの設計を始めました。

 設計は、パソコン上で3Dモデルというアプリを使って行います。それを3Dプリンターで印刷して、実装します。そしてどのぐらいの音が出るか、上に上がる力はどのくらいか、などを測定し、検証しています。

辻先生:その研究が、昨年、東京大学のUTokyo GSC-Nextに採択されました。1年間、東京大学工学部の研究室で指導を受けながら、自身の研究に取り組むことができる、というもので、まさに今、通っている最中です。
 オンラインで面談した際に同席してくださったJAXAの方は、トロイダルプロペラの研究者で、今、直接指導を受けています。「この音、なんとかならないかな」から始まって、手を動かし始めたものの、まさかここまで進展するとは思ってもみませんでした。ものすごく夢がありますよね。

三田国際_中学教頭・広報部副部長 内田雅和先生
中学教頭・広報部副部長 内田雅和先生

内田先生:生徒たちの様々な取り組みは、三田国際科学学園のキャリア教育の成果です。大学受験のために勉強するのではなく、今、やりたいことをきちんと突き詰めていった結果、道が拓けています。変化の激しい今の時代に必要なのは、自分でやりたいことを見つけて、学び続ける力です。伝えてきたことが生徒たちに響いているんだな、と改めて感じました。「行きたいから行きたい、やりたいからやりたい。それができるのが高校生の特権だよ」とよく話すのですが、生徒たちを見ていると、自分の道を見つけると、そこからが非常に早いんです。「行きたい」「やりたい」という興味や好奇心が、あっという間に理由づけされて、自分がどうしてそのことに夢中になったかというストーリーを、エピソードとともに語れるようになるのです。

辻先生:彼らと接していると、僕が伴走しながら発している言葉がキャリア形成につながっているのかな、と思うこともありますが、MSTの生徒だけではなく、生徒全員がなんらかの形で自分と向き合っています。うまくいかないこともありますが、先生や生徒の理解が深く、相談に乗るのが当たり前。そうした日常のささいな姿から、文化的な強さを感じています。

 同校が誕生して丸10年。新たなフェーズに入り、今、辻先生が思い描いているのは、科学でつながる縦の関係をつくることです。

辻先生:生徒は自分がやりたいことをやる、ということに変わりはありませんが、すでに耕されている土地があります。その土地に、自分で決めた種を、自分で決めた蒔き方で蒔くという選択肢もあるのです。先輩たちがやってきたことには先人の知恵みたいなものがありますし、同じものを知りたがっている人の間に、リスペクトし合える関係性が生まれたら、三田国際科学学園として、良い軸になるのではないかと考えています。

 必ずしも、荒野を耕すところから始める必要はない、という考えの根底には、1人でも多くの生徒に研究活動をはじめ、自分の興味を掘り下げる楽しさを感じてほしいという思いがあります。

辻先生:学内に生まれている文化を丁寧にかき混ぜて、均一にしたいんですよね。学校名の変更やゼロワンの完成が起爆剤となって進んでいくよう、力を尽くしていきたいと思っています。

 進化を続ける三田国際科学学園。ぜひ学校に足を運んでいただき、同校の「科学」がもたらす意味や価値を感じ取ってください。
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