わが子の得意や長所をいかした中学受験スタイル Vol.3
my TYPE第15号(2025年11月24日発行)掲載
記事/首都圏模試センター 取締役教育研究所長・北 一成
公立中高一貫校の受検や、私立・国立中学校の受験にチャレンジする小学生と保護者の志望校選択の志向と、そのための受験準備のスタイルは、いまでは非常に多様化しています。そうした傾向を反映しているのが、ここ10年ほどの間に顕著になった「中学入試の多様化」です。「難関校に受かるには、小学校低学年から著名な進学塾通いをはじめないと無理なの?」とか「中学受験(受検)は、小6から準備を始めたのでは間に合わないのでしょう?」といった保護者の声や疑問を耳にすることがありますが、実際のところ、すでに時代は大きく変化しているのです。今回の特集では、中学入試の形態が多様化し、「誰にとってもチャレンジしやすい」状態に変わってきたことの背景や、そうした入試にチャレンジすることの意義をお伝えしていきます。
今回の記事は、Webにて3部構成でご紹介しています。
中学入試の多様化と学校選択の多層化はこれからさらに進む!
今春入試でも「英語入試」の受験者は増え、「新タイプ入試」のバリエーションは多様化。同時に受験生と保護者の学校選びの価値観や志向、受験準備のスタイルは、年々「多極化・多層化」しています。そうした変化のもと、わが子に合った“脱偏差値&マッチング受験”の時代がやってきたのです!
近年の各地で人気上昇が目立つのは、いずれも中堅校、新進校がほとんど!
ここでは、今春2025年入試に見られた人気動向を振り返り、“中学入試の変化”のあり方を見据えて、そこにわが子(受験生)の志望校合格へのヒントを探っていきましょう。右のコラムは、「2025年入試に見られた人気動向・傾向」を箇条書きにまとめたものです。ここでお伝えしている人気動向は、本誌や本誌の姉妹誌である『shuTOMO』の誌面でも、これまで様々な角度や切り口でご紹介してきました。そのなかの最初の「最難関校・難関校の多くの志願者数は微減か横ばい!」と、次の「中堅校の人気増加傾向はまだら模様に!」という二つのポイントに着目していただきたいと思います。この「難関校よりも、むしろ中堅の多くの私立中の人気増加が目立つ」という傾向は、ここ数年の首都圏中学入試で、しばらく受け継がれてきたものです。その理由は、結論からいうと「中堅の(多くの)私立中の教育が良くなった(進化した)」ことによります。私立中高一貫校の多くは、文部科学省の『学習指導要領』が、ほぼ10年に一度改訂される度に、自らの教育を見直し、時代の変化やニーズに応じた力を育てるための教育の工夫を重ねてきました。大学入試の変化に対しても同様の対応を重ねてきました。
そして、「明治期以来の教育の大改革」ともいわれる、この2020年代のコロナ禍の時期を挟んでの“教育の変化の節目”に、公立学校も私立学校も、一斉に新たな時代に求められる教育を模索し、その実現に踏み切る改革に取り組み始めています。ただし、そのなかでも、一部の先進的な自治体や教育改革のモデル校になっている公立学校を除けば、全国の公立学校の教育改革の進み方は、私立学校がそれに先んじているのが実情でしょう。たとえば、この2~3年で人気増加の目立ってきた「グローバル教育+STEAM教育」の実践校や、IB(国際バカロレア)やダブルディプロマなど世界標準ともいえる新たな教育プログラムの導入校は、若い世代の保護者からの注目を年々増しています。ここでは、そうした「中堅校」や「新進校」の人気上昇を見るひとつの例として、今春2025年の首都圏各地(ここでは埼玉・千葉・東京・神奈川の1都3県)の入試で志願者が増加した私立中のランキング表をご紹介しています。神奈川の男子のように、最難関校の人気が増している一部の例外を除いては、これらのランキングに名前を連ねるほとんどの私立中が「中堅校」や「新進校(中学開校や共学化・校名変更などの学校改革から間もない新進気鋭の学校)」です。これがまさに、本誌が今春2025年の初頭からお伝えし続けてきた“脱偏差値&マッチング受験”の時代を象徴する、近年の新たな人気傾向であり、中学受験生と保護者の学校選びの志向の変化(多様化と多層化)を象徴するものなのです。



最良の教育環境を選び取ろう!
わが子に合った受験準備のスタイルで、最良の教育環境を選び取ろう!
この先も「英語入試」や「新タイプ入試」のバリエーションは増加し、受験生と保護者の学校選びの価値観や受験準備スタイルは、さらに「多極化・多層化」していくでしょう。そうした“脱偏差値&マッチング受験”の時代に、ぜひ、わが子に合った中学受験体験をしていただきたいと思います
わが子の最良の教育環境につながる道は決してひとつではない!
ここからは今回の特集の結論として、「中学入試の多様化」と“脱偏差値&マッチング受験”の時代のもとで、読者の皆さんには、ぜひ「わが子に合った受験準備のスタイルで、最良の教育環境を選び取っていただきたい」ということをお伝えしたいと思います。“脱偏差値&マッチング受験”とは、従来の中学受験で学校選びの大きな要素として受け止められがちであった「偏差値」や、「(現状の)大学進学実績」だけにとらわれることなく、「わが子に合った」、「わが子の特性や長所を伸ばしてくれる」学校を選んでいくという意味です。そしてそうした、学校とわが子の“マッチング”を第一に考え、親子にとって最良の(幸せな)教育環境の選択をしていただきたいということです。そういう視点で学校選びをしていくことができれば、何も中学受験の成功が、「早期から有名進学塾に通い」、「難関校に合格する」ことだけではないと、発想や価値観の転換ができることに気づいていただけるのではないかと私たちは考えています。まだ弱冠12歳の小学生には、誰にでも(わが子にも)将来に向けた大きな可能性があると信じている保護者の皆さんはきっと多いはず。そして、そうした小学生を受け入れる私立中学校の先生方も、そう考え、願い、自校の教育姿勢に合った、新たな入試形態を創意工夫して導入したのではないかと思います。そうした“マッチング受験”の対象となる小学生は、決して「早く(小学校低学年)から進学塾に通って鍛えられてきた子どもたちだけでなない」と、ほとんどの私立中高一貫校の先生方は考えているのではないでしょうか。
もちろん、難関校の受験~合格につながる学習に一所懸命に取り組むことは悪いことではありません。その学習の過程を通して、得られる学力や努力の経験は、きっと一生の財産になると思います。ただ、本誌が今回の特集で強調したいことは、「道は決してひとつだけではない」という、ただこの一点です。中学受験準備のための学習に取り組み始めるのは、小学校の何年生からでもかまわないし、どのような学習スタイルでも可能な時代になりつつあるということを、一人でも多くの保護者に知っていただきたいのです。たとえば、「すべての小学生に価値ある私立中高一貫校の良質な教育環境を!」というのが、本誌を発行する(株)首都圏中学模試センターが創立期から掲げてきたポリシーです。来年2026年3月から当社は「ONETES(ワンテス)株式会社」と社名を変更し、新たな時代のテストセンターとなることをめざしますが、このポリシーは、私学の創立の理念と同じように、校名(社名)が変わっても変わることはありません。
「中学受験をして良かったね! 」と、親子で思えるような幸せな受験体験を!
本誌編集部ではこの2年間、『myTYPE』の姉妹誌の『shuTOMO』1月号の特集で、翌年~2年後の中学入試状況を、模試での志望状況など様々なデータと情報から予測してきました。ここでは、今春2025年1月号で予測した「2025~2027中学入試大予測」という特集のなかでご紹介した、人気動向や変化の傾向のコラムを再びご紹介しておきます。幸い、これらの予測(予想)は、ほぼその通りの傾向が実現したといっても良い状況になっていまが、それでも、予想通りにはならない新たな変化が実際の入試では生じることがあります。左ページの「公立中高一貫校と私立中の併願者と私立中の新タイプ入試はさらに増加へ!」という予測は、まさにその通りになりましたが、たとえば上記の左段のコラムのなかの、2「男女別学校(男子校・女子校)の人気がさらに高まる!」というポイントは、私たちの予想とは違って、「共学校・大学付属校への人気回帰」の動向が生まれてきています。受験生の保護者の情報収集のアンテナが、それほど敏感に時代の空気や変化を感じ取っているということなのかもしれません。それでも、受験生と保護者の皆さんには、そうした変化(進化)のなかにこそ、わが子が実り多い受験体験をできるための新たな突破口やチャンスを見出してもらいたいのです。
最後に、この特集記事の締めくくりとしてお伝えしたいのは、世間に氾濫する多くの情報に振り回されることなく、「わが子を中心に考え、わが子に合った教育環境(学校)を、受験校として上手に選び取って」実り多い中学受験・受検の体験をしていただきたいということです。そして、進学した学校での中高6年間を楽しく過ごし、卒業して何年もたった後に、親子で「中学受験(受検)をして良かったね!」と笑顔で振り返ることができるような“ウェルビーイングな”中学受験体験をしていただくことを本誌は切に願っています。
中学入試情報誌『MyTYPE』とは
『MyTYPE』は、首都圏模試センターが発行する中学入試情報誌で、最新の入試動向や学校情報をわかりやすく紹介しています。偏差値データや合格者分析に加え、受験生の「タイプ」に応じた学校選びの視点が特徴です。学力だけでなく個性や学び方に合った進路を考えるヒントが得られ、保護者にとっても教育方針や学校生活を知る貴重な情報源となります。受験を通じて子どもの未来を見つめるきっかけとなる一冊です。今回は、2025年11月24日発行のmy TYPE第15号に掲載しました記事をご紹介します。
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