2025年2月2日(日)pm 新渡戸文化中「好きなこと入試」
中学受験の形が多様化する中、新渡戸文化中学校が実施する「好きなこと入試」が注目を集めています。今年で5回目を迎えるこの入試では、受験生が自身の「好きなこと」を通じて、社会貢献への思いを語ります。〈取材・撮影・文/福原将之〉 2月2日(日)午後に行われた新渡戸文化中の「好きなこと入試A日程」には、昨年の22名から増加し、28名の受験生が参加しました。この受験者数の増加は、新渡戸文化への期待の高まりを反映していると言えるでしょう。 「好きなこと入試」は、5分間のアピールタイムと10分間の口頭試問で構成されています。アピールタイムでは、受験生が自分の「好きなもの」や「好きなこと」について、それがどのように他者や社会の幸せにつなあがっているかを発表します。受験生たちは、自分の「好きなこと」への思いを、作品や模造紙、台本などに丹念に込めて表現します。 試験は5つの教室に分かれて実施され、各教室では公平な判定のため録画が行われます。評価のポイントは、自分の好きなことについて十分に語れているか(持ち時間の半分以上は言葉での説明が必要)、社会貢献の視点が含まれているか、プレゼンテーションツールを効果的に活用できているか、そして新渡戸文化の教育理念への理解と将来のビジョンが明確かどうかです。 興味深いのは、前日の入試で既に合格を果たした生徒も、この「好きなこと入試」に挑戦する姿が多く見られたことです。長い時間をかけて準備してきた「好きなこと」についてのプレゼンテーションは、受験生たちにとって、まさに小学校生活の集大成としての意味を持っているようです。 入試会場では、中学1、2年生の在校生が案内役を務め、控室から発表教室への誘導を担当します。温かな笑顔で受験生を励ます在校生の中には、「自分が受験生だった時、先輩に励まされて嬉しかった。今度は私が後輩を応援したい」と語る生徒も。その言葉通り、彼らの優しい雰囲気が、緊張した受験生たちの心を和ませていました。 新渡戸文化が最も大切にしているのは、学校と生徒との「マッチング」です。特に注目すべきは、毎週水曜日に実施される「CROSS CURRICULUM(クロスカリキュラム)」という独自の学習時間です。中学校前期では「好きなこと探究」として、生徒が自らの興味に基づいてテーマを設定し、専門的な教員のガイドのもと、探究活動を深めていきます。 クロスカリキュラムの「余白のある学び」は、指示待ちではなく、自ら考え行動する力を育てることを目指しています。「好きなこと入試」で入学した生徒たちは、入試でプレゼンテーションしたテーマ(クワガタや音楽など)を継続して研究する生徒もいれば、新たな興味を見つけて挑戦する生徒もいます。奥津憲人先生は「好きなことを極めてきた生徒たちは、自ら学ぶエンジンを持っており、周囲にも良い影響を与えています。中学でその経験を積み重ねながら、高校でのキャリアを考えていく姿が印象的です」と語ります。 *新渡戸文化の時間割例:毎週水曜日は「クロスカリキュラム(CC)」の日。生徒たちは自らの興味に基づいてテーマを設定し、探究的な学習に取り組みます。(※画像は学校パンフレットより引用) 新渡戸文化の「好きなこと入試」は、平岩国泰理事長の「勉強以外の面で生徒の本質を見たい」という思いから2020年にスタートしました。コロナ禍という特殊な状況の中で、入試のあり方を見直し、時代に合わせてアップデートする試みとして始まったのです。 その背景には「中学受験において、勉強だけで学校選びをしなければならないのはもったいない」という考えがありました。新渡戸文化では「人間の能力は学力だけでなく多岐にわたる」という考えのもと、従来の学力試験では活かせなかった力を入試で活用できるようにしています。例えば、ピアノの演奏力、リズム感、コミュニケーション能力、創作する力など、いわゆる非認知能力にも着目し、さまざまな力を入試で活用できるような入試として「好きなこと入試」を導入しました。 新渡戸文化の目指す「ハピネスクリエイター」、そして小中高全体の目標である「自律型学習者」の育成。これらは決して抽象的な理想ではありません。実際、新渡戸文化の受験生の8割が第一志望で入学し、特に「好きなこと入試」で入学した生徒たちは「この学校では好きなことを追求していいんだ」という意識を強く持っています。 自分の「好き」を深め、それを通じて社会に貢献する方法を考える。そして、その過程で自律的な学習者として成長していく。新渡戸文化が掲げる教育理念は、まさに入学試験から始まっているのです。 探究が好きな方、自分で考えることが好きな方、そして何より友達や先生との対話を通じて成長したいと考える方は、ぜひ新渡戸文化を志望校に加えてみてはいかがでしょうか。入試当日の様子 ー 5分間で伝える「好き」の力
温かな入試会場の雰囲気 ー 在校生の活躍と保護者控室
「余白」のある学び ー 好きなことを極める探究の時間
入試制度の背景 ー 多様な才能の発掘へ
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